白い世界と小さな黒い点

白い景色。

人の姿がなければ閑散とした世界。

堆く積まれたコンクリートブロック。

ボロのバラック。

風のある日は埃まみれ。

雨の日は泥濘だらけ。

分厚い雲の切れ間から、太陽の光が白い大地へと降り注ぐ午後。

バラックの片隅にみえる黒い影。

ここにどれだけの時間いるのだろう。

コンクリート工場を塒にしている黒いロングの毛のネコがいる。

名前は、シーシュ。変わった名前。

とあるコンクリート技師が命名。

どうもコンクリートの種類でa種b種c種とある中のc種からだそうだ。

シーシュはいつも

労働者がバラックや広いコンクリート工場のグラウンド内で

働くあいだ何をする訳でもなくウロウロする。

誰かが陽気に名前をよんでも

エサの皿をワザと鳴らしてみたりしても

一向に近寄ってこない。

午後の夕暮れ時ともなると

名前をあたえてくれた技師さんがネコの缶詰をプラスティック皿に盛る。

シーシュはコンクリートの影から、その様子を静かに見つめる。

技師さんは、「じゃ、また明日な。おつかれシーシュ。」とさよならの挨拶。

シーシュは、誰もいなくなったを警戒しつつ、餌の盛られた皿に近づく。

ゆっくり、ゆっくりと・・・・。

夜もしじま。

シーシュは、午後の太陽の熱を閉じ込めた

コンクリートブロックの山の上で毛づくろい。

そして、コンクリートブロックにぽっかり空いた隙間に

身を納め世界がまた明るくなるまで一休み・・・・。

世界が活気を帯び、にわかに人々が動き出す。

シーシュも目覚めの光を浴び動き出す。

・・・といっても、そこはいつもの白い世界。

きっとここが気に入ってるのに違いない。

でも、そんなことはシーシュはネコだから、知る術もない。

技師さんのくれる朝食は、技師さん自身の昼の弁当のシャケだったりして、

きっと間違いなくそれは気に入ってる。

でも、怒るだろうなぁ、技師さんの奥さん。

まぁ、それも分からないけれど・・・。

そんな時間は、恙無く。

コンクリートブロックが減って、また増え

その繰り返し。

シーシュの瞳に映る世界は変わらなかった。

世界がより一層白さを深める冬の季節。

シーシュは、夜の行動範囲をバラックに留め

技師さんの作った段ボールに

毛布を敷いた小屋に入り寒さを凌いだ。

そんな白く染まる日々の世界、

大きな黒い労働者の影が機敏に働き

白いブロックが積まれては次々と消えてゆく。

ある日、技師さんは昼休み近く拡声器をつかってみんなを集合させる。

ストーブで温められたバラックで

労働者全員にお茶が用意され

なにやら技師さんが説明している。

30分ぐらいだろうか?

罵声を上げてバラックから出ていく者がちらほら。

午後の5時の終業になる前に労働者たちは一人残らず姿を消した。

取り残された技師さんは

いつものように片隅からのぞくシーシュのため

缶詰を開け皿に盛った。

「シーシュ・・・・」と技師さんは力無く囁いた。

シーシュは、じっと技師さんを見つめていた。

次の日、

グレー色の雲に見え隠れする太陽が

白い光景を微妙に移し変える。

そこに人影はなく

技師さんの姿もそこにはなかった。

時が流れを止めたかのように静かだった。

誰も居なくなったコンクリートブロックの工場。

・・・黒い小さなシーシュの影を残して。

雪解けがはじまり、コンクリート工場の隅々に野花が顔を出す。

雲雀が遠く木漏れ日の間を縫って、甲高く鳴く

そんな生命の発芽の季節。

白い世界のバラックの片隅に

小さな黒い点がポツンといた。

微動だにせずいた。

厚い雲の切れ間から降り注ぐ暖かな日差しが

白い世界と小さな黒い点をやさしく包み込んでいた。

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